僕とギ装置Rと「Perfect Day」

 こんつは、ハンキー・ドリー・ハンクです。
あー、海馬の整理をしとりました。脳みその記憶を司る部位ですね。
コイツがまた厄介でして、時系列に沿って記憶を引き出せればいいんですが、てんでバラバラなんです。
しかも、テメーの意志で思いだそうとしても、すぐに出てくるかっつーとそうでもない。

 まずね、僕にとってギ装置Rがどういった存在かっつーと、コズミック・メイトなんです。うてゅうです、うてゅう。
親友であるだけじゃなく、ときに姉、ときに妹、そして色んな面で理解者なんです。
たまに僕の文章を誉めたり否定するしとがいますが、否定されると結構真摯に受け止めます。でも、誉められると、なーんか嘘くさいと勘ぐるんです。
でも、ギ装置Rに「面白い」「つまんない」と感想を述べられると「コイツは嘘をついていない」って思えるんですね。
親友だからじゃなく、物書きにとって何が嬉しいかって良き読者の存在なんですよ。有名になろうが、クソみたいな読者にちやほやされて嬉しい物書きは物書きじゃねーです。
だからね、僕ぁお別れするつもりはねーんです。
まあ、事実を認められない意気地なしって言われちゃうと、そーなんですけどね。

 僕がギ装置Rと知り合ってから十二年とちょっとじゃねーですかね。
当時はまだ本名をカタカナにしたハンドルネームで、たまに僕のサイトに書き込みしてくれてたんですが、結構トゲがありましてね。僕の男性的な面に喧嘩腰みたいなね。
「なんだ、この女?絶対、俺と合わない」と感じてました。

 ネット上でのやり取りから、実際に会うきっかけになったのはルー・リードの『トランスフォーマー』でした。
おそらく、彼女の好きなデイヴィッド・ボウイがプロデュースしたから興味を抱いたんだと思います。そのCDを渡すために会うことになったんです。
なので、『トランスフォーマー』は捨て曲がねー名作ですが、特にPerfect Dayを聴くと、あの日のことを鮮明に思い出せるんですね。

 小田急新百合ヶ丘駅で待ち合わせたんですが、東スポ読んでたら新聞越しにキリンラガーのロング缶を差し出す人あり。
新聞を下ろすと、快晴なのに銀色の雨傘をぶら下げて立っとりました。
なんでも、雨の日にお店に忘れた傘を受け取ってきたっつーことでした。
挨拶の前に「やだ、アンタ、自分でハンサムじゃないって言ってて、ホントにハンサムじゃない人に初めて会った!」が一言目っつーのはどーかと思いますが。
結局、ギ装置Rの提案で外飲みすることになり、ビールや缶チューハイ、日本酒なんかを買い込んで、帰りは二人ともベロベロになって駅まで歩いたんですけどね。
要は意外にもウマが合って夕暮れ時まで飲みまくったってことです。
ガキの頃、水たまりで泥んこになって遊ぶとハイになったじゃねーですか。二十年ぶりにそんな感覚になりましたね。

 まあ、それからしょっちゅう一緒に飲み歩いた話は僕の頭と心の中に、しっかり記録されてます。
たまに喧嘩もしましたが、少なくとも退屈な時間は無かったですね。いや、嘘のような本当の話ばかりです。
カボチャ抱えて夜の歌舞伎町を走るネーチャンって、エクストリームでしょ?
夜道で痴話ゲンカしてると思ったら、そうじゃない。

「カボチャなんて家の近くで買えよ!」
「カボチャ!私にカボチャを買わせて!」
「だから、よせってば!」
「カボチャ!」

ある外飲みの帰りなんか、コンビニで買ったシーザーサラダに使わなかったドレッシングを、僕のシャツになすりつけて「こいた!この人こきました!」と笑いながらタクシーに乗り込み走り去ったりね。
もうね、発想が小学生でしょ?
走る、跳ぶ、転がる、泣く、駄々こねる、とにかく会うたびに突き抜けたことしてくれましたわ。

 あれから十年以上経ったことも驚きですが、まだ二十代の頃、彼女が「年取ったら茶飲み友達になってそう」と言ってたことが現実味を帯びてきたことも驚きでした。
僕も結婚して、カミさんと三人で飲みに行くこともありましたからね。
このまま年取って、よくいるジジババ連みてーに店のテーブル占拠しちゃうんじゃねーかと。

 次に会う約束をしたのは去年六月二十一日。僕とカミさんが函館へ発つ日に新宿駅まで見送りにきてくれたときですね。
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今年、夏頃には函館に行くと言っとりました。そいで「うんうん、元気でね、またね!」と言って帰っていきました。
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そんとき、ミニサボテンの兄弟をプレゼントしたんですが、カミさんが「話しかけてあげると気持ちが通じるみたいです」っつー説明したら、自宅で話しかけてたみたいです。
ただ、サボテンの精神衛生上、よろしかねーことを話しかけてないか心配です。
サボテンの気持ちは僕も永遠の謎ですが。

 今年二月十九日、ご主人から電話を受けてから、翌日午後まで、放心の合間に、会いに行こうか悶々としておりました。
もし、闘病中であれば、僕ぁ会いに行ったでしょう。
でも、今、会いに行くということは、文字通り別れを告げに行くっつーことです。冗談じゃないよ。ふざけんじゃねえよ、と。
まあ、この際、カミさんが出勤してから、吐き気と下痢と脚がすくんでまともに立てなくて、カミさんが早く帰宅しねーかボロボロ泣いてたことはバラしましょう。へなちょこ野郎なんです、ホント。
だからですね、「別れを告げると永遠に会えなくなるから会いに行かなかった」っつーことにしといてください。

 あ、あと最後にいいですか。
たった何日かのうちに、共通の友人や、疎遠になっていた方なんかと電話やメールのやり取りがありまして、「みんな優しい人ばっかじゃないか」と彼女の人徳に感心しました。カミさんも気を遣ってくれたりね。
いくら親友っつっても、異性のことでしょぼくれてたら、うんざりされますから。
でね、ふと思ったわけですよ。
こう、僕ぁ、なんつーか、文章書くときに一生懸命になるのは何かっつーと、「笑いがあること」なんですね。
なので、辛気くさい内容はやめよう、と。

あなた方が目にしているこの大きな体はひとつです。その中に、目に見えないもうひとりの小さな自分がいるのです。
-あるヨーロッパ人宣教師
(ジェイムズ・フレイザー著『金枝篇』「魂の本質」より)

体が一つなら、魂も一つ。どちらが重要という決まりなんか無い。
-佐藤仁一


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2 Responses

  1. ショーグン“ニャホニャホ”ヤマザキ より:

    ふさわしい 追悼文だ。書いてくれたことに感謝。
    おれ、初めて実物のハンクさんとギ装置Rさんと会った時、言ったよね。
    「あ、これは恋人同士になると近親相姦になっちゃう」って。
    だから、これでいいのだ。

    しっかし、やっぱり、れれこさんに言いたい。
    とんでもないにもほどがあるぞ!! どんだけみんなに愛されてると思ってんだ!!! はあはあはあはあはあ。過呼吸になるじゃんっ。

    失礼。興奮してしまった。


    ときにハンクさん、いつかの花見のとき、おれを見張りに立たせて、二人で公衆便所の「女」の方に入っていって撮影していた写真はどうなっておるのかね。

    • hank より:

      あの写真は「こ、これはあらぬ誤解を受ける」と二人で合意し、お蔵入りになりました(笑)
      おそらく、実家に保管してあるデスクトップPCのHDDに眠っているはずです。
      なんというか、つげ義春や石井輝男的な生々しい臨場感がありました。

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